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介護の基礎知識

福祉用具レンタルが購入よりおすすめの理由・介護保険対象13品目・利用方法

親を急に自宅で介護することになり「介助に必要なものを揃えるにはどうしたらいいの?」と悩んでいませんか?

自宅で介護を行う場合、介護する方の負担を軽減する「福祉用具」を、介護保険を使用し1か月のレンタル料の1割で借りることが可能です。対象となるのは介護される方が要介護2~5の場合ですが、要支援1・2と要介護1の方でも利用可能なものや特例もあります

また、福祉用具は身体などの状況に応じて変更することが望ましいため、購入するよりもレンタルするのがおすすめです

この記事では、「福祉用具」について

  • 介護保険でレンタルや購入できる品目
  • 利用方法
  • 購入よりレンタルがおすすめの理由

など、「知らずに損をした!」などということがないように、しっかりと紹介していきます。

この記事を読んでいただければ、自宅での介護準備にすぐに役立てていただけますよ。

※当該記事に関する個別のお問い合わせは受け付けておりません。また、記事中の触れられている法的見解についての責任は一切負いかねます。所管の自治体窓口または弁護士などの専門家にご相談ください。「そよ風」のサービスに関してのお問い合わせや不明点は、お問い合わせフォームより受け付けております。

1.介護保険でレンタルできる「福祉用具」13品目と購入できる6品目

「福祉用具」のレンタルは、自宅で可能な限り自立した日常生活を送ることや、介護する方の負担を軽減することを目的としているため、介護保険が適応されます。

また、身体の状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて、適切なものを利用するのが望ましいため、基本的にはレンタルが原則とされています。

ただし、消毒やメンテナンス管理で再利用できない直接肌に触れるものなど、以下のようなものはレンタルではなく購入となります。

  • 他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗があるもの
  • 使用によって形態や品質が変化して再利用できないもの

それでは、具体的にどんなものが介護保険の対象となるのか、レンタルと購入に分けて、それぞれみていきましょう。

1-1 要介護2~5の方が介護保険でレンタルできる「福祉用具」13品目

介護保険でレンタルできる福祉用具は全部で13品目あり、利用できるのは要介護2~5の方です。

それぞれの品目に適応基準が設けられていて、その基準にあったものがレンタル可能となり、1か月のレンタル料金の1~3割の料金で借りることができます。

なお、要介護度別に介護保険の1か月の支給額限度が決まっているため、ほかの介護サービスと組み合わせて限度額に応じた福祉用具をレンタルする必要があります。

  1. 車いす(付属品含む)
    自走用標準型車いす、普通型電動車いす、介助用標準車いす
  2. 車いす付属品
    クッション、電動補助装置など
  3. 介護用ベッド
    サイドレールが取り付けてあるのも(または取り付け可能なもの)で、背上げまたは脚上げ機能、もしくは高さ調整機能がついたもの
  4. 介護用ベッド付属品
    マットレス、サイドレールなどベッドと一体的に使用するもの
  5. 床ずれ防止用具
    空気パッドなど身体の下に入れて、起き上がりや寝返りなど、体位変換が容易にできるよう補助するもの
  6. 体位変換機
    空気パッドなど身体の下に入れて、起き上がりや寝返りなど、体位変換が容易にできるよう補助するもの
  7. 手すり
    工事不要で設置できるもの
  8. スロープ
    段差解消のために工事不要で設置できるもの
  9. 歩行器
    歩行機能を補う機能を持ち、移動時に体重を支えるもの
    固定型歩行器や四輪歩行器など(シルバーカーは対象外)
  10. 歩行補助杖
    松葉づえ、多脚杖、ロフストランド・クラッチ、サイドウォーカーなどの多点杖(一脚杖やT字杖などのステッキは対象外)
  11. 徘徊感知機器
    外出通報システム、離床センサーなど
  12. 移動用リフト(つり具の部分を除く)
    工事不要の移動用リフト、バスリフトなど
  13. 自動排泄処理装置 ※介護4・5の方のみが対象
    ベッドに寝たままの状態で排泄の処理をする装置(本体のみ)
    排便、排尿をセンサーで感知し、吸引・洗浄・乾燥を自動的に行う介護ロボット

レンタル費用一例(1か月あたり)

  • 車いす 2,700~9,200円
  • 介護用ベッド 9,540円
  • 歩行器 2,966~6,190円
  • 歩行杖 1,000~1,600円
  • 手すり 11,947~19,150円

※料金は事業者により異なります。一例としてご覧ください。
※各費用については、2021年7月執筆時点の情報です。

(参照)厚生労働省「福祉用具」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000212398.html

利用者負担

  • レンタル費用の1割

※一定以上の所得がある場合は2~3割

要支援1.2と要介護1の方が介護保険でレンタルできる4品目と「例外給付」

福祉用具を介護保険でレンタルできる対象は要介護2~5の方ですが、要支援1・2と要介護1の「軽度者」でも対象となるものがあります

「軽度者」レンタル対象品目

  1. 手すり
  2. スロープ
  3. 歩行器
  4. 歩行補助杖

また、上記以外でも様々な疾患などにより、医師の意見に基づき福祉用具が必要と判断され、市区町村が特に必要と認めた場合は「例外給付」となり、介護保険でのレンタル利用が可能となります

その主な事例と対象品目を以下にまとめます。

  • 疾病などにより状態が変動しやすく、日によってまたは時間帯によって、その福祉用具が必要な状態となる方 (一例:パーキンソン病の治療薬によるON・OFF現象)
  • 疾病などにより、状態が急速に悪化し、短期間のうちにその福祉用具が必要な状態となることが確実に見込まれる方
    (一例:がん末期の急速な状態悪化)
  • 疾病などにより、身体への重大な危険性または症状の重篤化の回避など、医学的判断から、その福祉用具が必要な状態に該当すると認められた方
    (一例:ぜんそく発作などによる呼吸不全、心疾患による心不全、嚥下障害による嚥下性肺炎の回避)
品目「例外給付」対象者
車いす
(付属品含む)
次のいずれかに該当する場合
・日常的に歩行が困難な方
・日常生活範囲における移動の支援が特に必要な方
介護用ベッド
(付属品含む)
次のいずれかに該当する場合
・日常的に起き上がりが困難な方
・日常的に寝返りが困難な方
床ずれ防止用具
および体位変換機
日常的に寝返りが困難な方
認知症老人徘徊感知機器すべてに該当する場合
・意思の伝達、介護する方への反応、記憶・理解のいずれかに支障がある方
・移動において全介助を必要とする方
移動用リフト
(つり具部分を除く)
次のいずれかに該当する場合
・日常的に起き上がりが困難な方
・移乗が一部介助または全介助を必要とする方
・生活環境において段差の解消が必要な方
自動排泄処理装置すべてに該当する場合
・排便が全介助を必要とする方
・移乗が全介助を必要とする方

利用者負担

レンタル料の1割

※一定以上の所得がある場合は2~3割
※費用は品目により異なります

1-2 介護保険で購入できる「特定福祉用具」6品目

福祉用具のなかでも直接肌にふれるものなど、レンタルに向かないものは「特定福祉用具」として、介護保険を利用して購入することができます

要介護度別の介護保険サービスの毎月の利用上限額とは別に年間10万円を上限として、購入費の1割で購入でき、残りの9割が介護保険から負担されます。購入時に全額を支払い、後日、市区町村に申請を行うことで払い戻しを受けることができます。

なお、保険給付の対象となるのは、市区町村から指定を受けた事業者から購入した場合のみとなりますので、事前に指定業者を確認のうえで購入するように注意しましょう。

「特定福祉用具」の種類

  1. 腰掛便座
  2. 自動排泄処理装置の交換可能部品
  3. 入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、入浴用介助ベルト)
  4. 簡易浴槽
  5. 移動用リフトのつり具の部分
  6. 排泄予測支援機器

対象者

要介護1~5の方

利用方法

  1. ケアマネジャーまたは地域包括ケアセンターに相談する
  2. 相談のうえ紹介された福祉用具販売の指定を受けた事業者から購入する
  3. 市区町村の窓口に申請を行う
  4. 介護保険から費用の9割が給付される

※一定の所得がある場合は8~7割の給付

利用限度

同一年度内10万円まで

2.「福祉用具」は購入するよりレンタルがおすすめ

福祉用具はインターネットなどで安く売られていたりしますが、常に身体状態にぴったりあったものを使用しないと、危険が伴ったり、身体状態がかえって悪化する場合があります。

特に高齢者の身体状態は変化しやすいため、安全面から、その時々で適切なものに選びなおす必要性があります。このことからも、福祉用具はレンタルしたほうがよいといえます。

レンタルの場合は、以下のようなメリットがあります。

  • 定期的なメンテナンスを行い不具合がないか確認してくれる
  • 身体状態の変化にあわせてベストなものに選びなおしてくれる

このようにレンタルなら、専門職員が用具の選定から、定期的なアフターフォローとしてメンテナンスや調整、交換を行ってくれるので安心して利用することができます。また、アフターサービス費用が無料です。

※令和6年度介護報酬改定にて、歩行器や固定用スロープなど一部の福祉用具について、貸与と販売の選択制が導入されました。これは福祉用具を適時・適切に利用するための観点から導入されたもので、貸与だけでなく販売後においても使用状況を適宜確認し、使用方法の指導等のサポートが行われるとのことです。詳しくはケアマネジャーにご確認ください。

2-1 購入するよりもレンタルの方が費用を抑えられる

福祉用具の使用が長期間になる場合、レンタルより購入の方が費用を抑えられるのではないかと考える方もいると思いますので、車いすを一例として比べてみてみましょう。

車いすの介護保険でのレンタル料金は、1か月あたり2,800~9,200円くらいですので、自己負担は280~920円程度です。一方、購入した場合は介助用車いすで70,000~180,000円(定価)ほどです。

分かりやすいように平均で比較してみると

  • レンタル 1か月あたり730円
  • 購入 160,000円

※各費用については、2021年7月執筆時点の情報です。

レンタル料金が購入価格と同じくらいになるには約18年かかります。身体状態にあわせて途中で買い替えると考えると、レンタルの方が費用を抑えることができます。

さらに、レンタルは1か月単位での更新となりますので、利用を終了した場合には用具の引き取りをしてくれるので、まずは試しに使ってみたいという方も気軽に利用できるのでおすすめです。

ただし、なかには介護保険の対象となる福祉用具では、身体状況やご自宅の環境にあわずにオーダーメイドする必要がある場合があり、高額でも購入される方もいます。

3.「福祉用具」レンタル利用の流れ

福祉用具のレンタルは介護保険サービスの一つなので、利用したい場合には、ケアプランに組み込まなくてはなりません。そのため、まずはケアマネジャーまたは地域包括ケアセンターに相談を行いましょう。

相談窓口

  • 要介護1~5の方:ケアマネジャー
  • 要支援1・2の方:地域包括ケアセンター
  • 介護サービスを利用したことがない方:市区町村の介護保険窓口、地域包括ケアセンター

利用手順

  1. ケアマネジャーまたは地域包括ケアセンターに相談
  2. ケアプランを作成してもらい福祉用具のレンタル事業者を選ぶ
    先にもふれたとおり、保険給付の対象となるのは、市区町村から指定を受けた事業者から購入した場合のみケアマネジャーに指定の事業者を紹介してもらいます。指定事業者には、専門知識をもった「福祉用具専門相談員」がいて、身体状態や自宅環境にあった福祉用の選定と提案をしてくれます。
  3. 福祉用具専門相談員が自宅を訪問し、福祉用具を選定・提案
    福祉用具専門相談員のアドバイスのもとレンタル用品を決めていきます。不明な点や気になることは、遠慮せずに質問をすることが大切なポイントとなります。そのうえで納得ができたら申し込みを行うようにしましょう。
  4. 事業者が納品し、利用者にあっているか確認
    納品の際には、利用者の方が使いやすいよう調整を行ってくれます。
  5. レンタルする福祉用具を決定し、事業者と契約
  6. レンタル・サービス開始
  7. 定期的なメンテナンスなどのアフターフォロー
    福祉用具専門相談員が定期的に自宅を訪問し、用具のメンテナンスや調整、 身体状況にあわなくなった場合には交換など、アフターフォローをしてくれます。
福祉用具を選ぶときには、それが本当に必要かどうかもよく考えるようにしましょう。
なぜなら、福祉用具を使うことで、楽になったり便利になりますが、その反面で、自分でできる範囲を狭めてしまう可能性もあります。

例えば、手すりなどを伝いながら歩くことができるのに、車いすを常時使うようになれば、脚の筋力がどんどん弱くなってしまいます。何か支えがあれば、自力で歩くことができるなら歩行器や手すりの方がよいかもしれません。

もちろん、痛みがあるなど心身的な負担があるようであれば、積極的に福祉用具を取りいれ、日常生活を快適にすることがおすすめです。
なるべく自力でできることを減らさないような福祉用具選びを意識しながら専門相談員のアドバイスを聞いて、適切に選ぶようにしましょう。

さいごに

いかがでしたか?

福祉用具は自宅で介護をする方の負担を軽減するほか、介護をされる方にとっても適切に使用することで、自立した日常生活を送る手助けになるものです。

初めて福祉用具を選ぶときには、たくさんありすぎて迷ってしまうこともありますが、レンタルしてみたけど結局必要なかったという場合もあります。福祉用具専門相談員のアドバイスを聞きつつ、可能な限りできることを奪わないためにも「今、本当に必要なのか」という視点も忘れないのがポイントです

また、かかりつけ医や理学療法士にも相談しながら身体状態にあわせた必要な用具を選ぶようにしましょう。

※当該記事に関する個別のお問い合わせは受け付けておりません。また、記事中の触れられている法的見解についての責任は一切負いかねます。所管の自治体窓口または弁護士などの専門家にご相談ください。「そよ風」のサービスに関してのお問い合わせや不明点は、お問い合わせフォームより受け付けております。

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この記事の監修者

株式会社SOYOKAZE
事業統括本部部長(拠点サポート部署)
渡邉 祐貴
介護福祉士・介護支援専門員


介護現場に10年従事し管理者、生活相談員、計画作成担当者など様々な役務をデイサービス、ショートステイ、グループホームで経験。介護福祉士、介護支援専門員等の資格を取得し、介護の専門性を磨く。
その後、現在の役職となり介護業界での経験は約20年。
現場の感覚を忘れずに、課題や問題点を抽出し、その対策に日々取り組んでいる。

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